「新選組血風録」と「燃えよ剣」


 


時専で栗塚旭さん主演「燃えよ剣」の放送が終了して早、三ヶ月。。。
ようやく生活も落ち着いてきたので、もう一度初めからじっくり鑑賞したいと思ってましたが、現在2作品とも姉に貸し出し中。
・・・なかなか戻ってこない・・・(苦笑)
なので・・・感動の名台詞などもうろ覚え状態なんですが、懐かしい思い出(?)を振り返りながらちょっと書き綴ってみます。。(閑人)



「血風録」と「燃えよ剣」は両作品とも新選組を描いた作品。
言わずもがな・・ですが、結束信二先生の脚本が本当に素晴らしいぃぃ・・



新選組血風録



新選組血風録」(新選組の隊士たちを中心に描いた作品)は、まるで一話ごとに毎回一本の映画作品を観ているようで、その質の高さに毎度驚きでした。
近年、時代劇や大河ドラマで感動できない自分ですが、この「血風録」と「燃えよ剣」には何度も胸を打つような感動を覚えました。
作品を見終わった後・・心に残り続けるあの余韻・・思い出すたび今も胸を熱くさせます。。。


モノクロ作品である「血風録」は、隊士が粛清されるまでのエピソードなども度々出てくるので、原作の泥臭い感じ、血なまぐさいイメージとモノクロの映像がマッチしていて、作品の重みがより感じるというか。芸術作品とも思える重厚さがありました。
また、栗塚旭さん、左右田一平さん、島田順司さんお三方が集った同窓会(特別番組)の中でも、当時予算の少ない中で、全てのスタッフ・俳優さんたちが心血を注いで作品を創り上げていった情熱や想いなどを知り、より一層深みを感じました。



2作品とも新選組の話なので、当然、ストーリーがダブるエピソードなどもありましたが、各作品の色に沿った脚本・演出に変えておられました。
その違いなどを比べるのも面白かったなぁ。


「血風録」の若々しく美しい栗塚旭さん



沖田総司



トシさんと総司。
総司の前でだけは、素の自分をさらけ出すトシさんであった。



特に興味深かったのは、両作品とも同じ配役である島田順司さん扮する沖田総司との今生の別れのシーン。
「血風録」では昼下がり・・総司が、江戸を去る前にお忍びで尋ねてきた歳三の最期の訪問に「京都の風」を感じる・・という表現をした感動の名シーン。
歳三と別れた後、何ともいえない表情で「京の風が去ってしまった・・・」と、寂しげにつぶやき、静かに障子を閉めるシーンは、何度見ても泣けます。。




燃えよ剣」の歳三の最期の訪問シーンは月夜・・・蒼白く光る「月」の光が二人を照らし出し、これから死に行く総司が、歳三と最期まで共に戦う事ができなかった・・という苦渋の心情を表現している・・・その想いが観ている側にもぐっと伝わってきて、胸がジンと痛くなりました。。


歳三が・・「今度生まれ変わるときは・・・オレはお前のような人間に生まれ変わりたい・・」と言うと、総司は「困りますよ、土方さん。私は生まれ変わったらまた、あなたのような人と出会いたいのだから・・・」
この名台詞は、若干の違いはあるものの両作品でも使用されており、とても感銘を受けました・・・


「血風録」。。総司に別れを告げるために訪れた歳三さん
  


普段は見せないトシさんの優しい表情が・・・総司との最期の別れのシーンをより一層悲しい気持ちにさせます。




山崎烝


監察の山崎烝(やまざき すすむ)も好きな人物の一人。2作品では役者さんも変わり、全く違う描かれ方をされておりました。どちらも俳優さんの個性が光る、とても魅力ある人物として描かれておりました。さすが結束さん!!


「血風録」(坂口祐三郎さん)で描かれている、生い立ちのエピソード(敵討ちの直前に逃げた赤穂浪士の末裔)や最期のシーン(江戸へ向かう船上で志半ばで息絶える)など、脚本・演出はこちらの方が好みなんですが・・・坂口さん演じる山崎烝は、非常に生真面目で心根が真直ぐな忠義な人物という印象が強く残っています。


燃えよ剣」では、さらに人間味溢れる人物像に。
なんといっても・・・山崎役を演じていた中野誠也さんは、ため息が出るくらいとっても魅了的で素敵でした。。
物静かでクール。正確かつ、先の先まで見通して行動するずば抜けた頭脳と実行力。誠実で忠義心に溢れる好人物。
いつも平常心でクールであるため、ところどころに垣間見せる心優しい姿がまた魅力的で。
監察役の山崎烝・・・というと生真面目で忠義心が強く少し怖いイメージがあり、冷徹で堅い人物を連想するんですが、中野誠也さんの人間味ある温かみが滲み出ているようなキャラクターに、すっかり惚れこんでしまいました。
ある意味、主人公である栗塚さんのトシさんと並ぶくらい、心に残る人物であります。




「シノビリカ いずこでみても 蝦夷の月」


※遠く離れた蝦夷の地で、土方歳三が詠った句(〜ドラマ「燃えよ剣」より)
シノビリカ・・・アイヌ語で、「とてもよい・非常によい」という意味らしい。


今にして思えば、沖田総司との別れのシーンで、総司が「月の光が綺麗ですね・・京都にも・・そして土方さんが行かれる北の地でも・・同じ月が照っているのでしょうね」
と言ったこの言葉に繋がっているような気がします。



燃えよ剣」は、土方歳三が主人公。彼を中心にストーリーが展開してゆきます。
私が初めて読んだ司馬遼太郎先生の作品でもあり、「血風録」とはまた違った思い入れがありました。
大変有名な逸話(司馬先生が、あまりにも歳三さんのイメージにピッタリであった栗塚さんを絶賛した)にもあるように、栗塚旭さんのトシさんは、本当に原作からそのまま飛び出してきたような・・・土方歳三のイメージそのものなのです。


 
血風録よりもさらに凄みが増している栗塚さん


普段、切れ味の鋭いナイフのような殺気みなぎる、冷徹で鬼のような歳三さんが、人間味溢れる本当の自分を見せることができるのが、近藤勇沖田総司、そして小説の中でしか登場しない架空の愛人「お雪さん」



歳三と雪の出会いのシーン。夜討ちにかかり、傷を負った歳三を助けるお雪。。


燃えよ剣」で個人的に一番好きなエピソードは、トシさんとお雪さんとの
はかなくも美しく純粋なラブロマンス。
40年も前の時代劇とは思えないほど、お二人のストーリーはロマンチックでした。。。(思い切りメロドラマと化してましたけど・笑)
鬼副長で知られた、無骨で冷徹、無愛想で無口な「土方歳三」が・・・お雪さんの前では人が変わったように妙に饒舌になる子どものようなオヤジ(?!)と化してしまう(爆笑)・・・・そんな姿がなんとも愛らしい。


血のついた着物を取りかえるように、お雪が亡くなった夫の紋付羽織を勧める。

自分と同じ紋の着物を見て、驚く歳三。


お雪が江戸の武家の妻女(未亡人)だと知り、親近感を寄せる歳三。。
 


磯部玉枝さん扮するお雪さんは、これはまた清楚で聡明で美しく・・・子どもに戻ったようによく喋る歳三をまっすぐ見据え、一所懸命頷きながら話に聞き入っている。。。


二人の間に流れる空気感は柔らかく・・・純粋でとても美しく描かれており
毎回二人のシーンをドキドキ・ウットリしながら見惚れおりました。。
終盤、それまでは歳三の訪問を静かに待つだけのお雪さんが、大阪や蝦夷地まで歳三を追ってくるという情熱や芯の強さも垣間見せたりして、そんなお雪さんの心情の変化なども面白かったなぁ。


お雪さんに借りた紋付を嬉しそうに総司に見せびらかす歳三。


お雪さんの話しを総司にだけこっそり話すデレデレ状態のトシさん。かわいいです。



左右田一平さん


「血風録」では、冷徹で目つき鋭い斉藤一を演じ
燃えよ剣」では、いつも明るく楽天的で妙に物知りでおしゃべりな裏通り先生(お医者さん。ドラマのオリジナルキャラ)で登場する左右田一平さん。



このまったく違う人物像を素晴らしく演じわけており、結束先生が描くドラマには無くてはならないスパイス的存在。
私は先に「燃えよ剣」の裏通り先生や、「用心棒」の明るいおっちゃんの役などを見てしまっていたせいか、「血風録」の斉藤一は、あまりにも衝撃的でした。
殺気をも感じる凄みある鋭い眼光・・・セリフもなく、ただそこに佇んでいるだけでも伝わってくる気迫。。。
なんて凄い役者さんなんだ・・と、、ただただ圧倒されるばかりでした。